天使にだって魂に影響されるモノゴトは、ある。
「私は何をしたら良いのだ?」
出てきたのは、今日明日と本当は休日だったという、先程扉を開けてビハールの言葉を聞き入れてくれた上天使だった。
「こちらに一から九までの数字をお書きください。出来るだけ急いで」
「……わかった」
上天使のその人が書き込んでいる間、反対側に立ったビハールが、ミスを犯したとされた天使を呼んだ。
「君はこっち側に来て、同じように数字を書いて」
暗雲を背負っていそうなくらい暗い表情のその天使は、ふらふらとやってきて無言で渡されたペンで数字を書き込む。
二人共が書き終わり戻るとビハールは「ありがとうございました」と言って、再びホワイトボードの手前に立つ。
「これからお二人が書いた数字を皆さんに見ていただきます。見えない方は位置を移動して、しっかり両方とも見てください!」
そう言うとまずは上天使の書いた数字の方を皆に見せる。
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数十秒してから、ビハールは問うた。
「全員確認しましたか?」
一瞬ザワザワとしてからまた沈黙に戻り、
「ではもう一方も見てください」
そう言ってボードをガラガラと回転させて反対側を天使達に見せる。
すると…………
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はじめは小さかったざわめきが、どんどんと大きくなり、もう誰が何を言っているのかもわからないほどとなる。
静かにして、とビハールが叫ぶもなかなかその声が届かない。
その時、数字を書いた上天使がスッと立ち上がって手を叩いて言った。
『皆のもの静かにしなさい、続きの話を聞こうではないか』
その音と声はざわめきを越えて全員の耳に響き、再び静寂が訪れる。
それはその上官天使の『力』なのだろう。
「御力をお借りしてしまってすみません、ありがとうございます」
エドウィンがその上天使にお礼を述べた。
「では、失礼します……。
今見ていただいてお分かりになったと思いますが、数字の1と7の書き方に注目していただきたいのです!」
誰の采配か、通達所の一番大きな掲示板に、二人の書いた1と7の数字が大きく映し出される。
このようなシステムは大抵は上天使達のもつ力だ。
「あ……ありがとうございます!」
上官たちが集まっている場所に向けてビハールはそう言って頭を下げた。
「いいってことよ!」
計画部署の上官が笑顔で言って手を振った。
「ご覧のように、この状態では1と7を間違えてもしょうがないと思うんです!」
上官天使の書いた7と、ミスを犯したとされた天使の書いた1はほぼ同じ形で、個別に書いてあったら判別は不可能だろう。
「この数字の書き方は、僕たち天使でも、元となった魂に影響されるようで、僕の知る限りでは気をつけなければならないのはこの1と7だけです」
もしかしたら他にもこういうモノがあるかもしれない。でもそれはどちらか片方の部署だけで簡単に見つけられるものとも思えない。
「僕が、今回のことを誰にも大した咎はないと考える理由はそれです。
魂からの情報、そもそもの認識の違い。コレは普段からお互いを認め合って良く話していないと気づけないことじゃないですか……?
何かが悪いとするならば、両部署の関係性。常日頃当たり前のように会話がなされていれば、今日のミスだってもっと早い段階で解決していたかもしれないじゃない……。
決定部署も雲絵師部署も、どとらにも原因があるのだから、これから正していけば良いじゃないです……か…………?」