二度と同じことを繰り返さないためには……
気づいた勢いでここまで話したものの、あまりにも自分勝手な思いを表しすぎたか、とビハールの声はどんどんと尻窄みになっていってしまった。
「俺とビハールは、幸い身近な知り合いのお陰でその数字のことを知ってたから、てっきり天使全員そういうことがあるもんなんだと認識してたんだけどな。
通達所の数字はいつも7に線の入ってるタイプのだったし、そういうことがあるんだって事、すっかり忘れてたよ」
ビハールとエドウィンは、今ここにはいないけれど、もう一人の仲がよかった天使のお陰でこのことに気づけたのだ。
「……僕が出来るだけ多くの者の前で、と言ったのはこのためです……」
両部署の関係のことは置いておくとしても、この数字のことだけは解決しなければならないと、ビハールは頑張って声を絞り出した。
「これまでどうしてこのようなことが起こらなかったのか、僕にはわかりませんが……このことを全員が認識して、気をつける必要があります。
そしてできることならどちらかに統一した方が良いです。
二度とこのようなミスを起こさないためにも……!」
その言葉に、そこにいる全天使が静かに同意したようだった。
その数字があるたびに、どちらかわからずいちいち確認することを思えば、どちらかに統一した方が良いというのは誰の目からも一目瞭然。
「僭越ながら、上天使様には申し訳ありませんが…………僕は、彼の書いた七の方をおすすめしたいと思います……何故なら急な変更やミスが起きた時、急いで書いてもこれなら判別がつくからです…………」
ミスを犯したとされた天使の書く7には、短い線が入っており、これならたとえ急いで書いたとしても、判別がつく……。
試用期間の、それも昨日失敗して多大な迷惑をかけるところだった自分が、他部署のしかも上天使に物申すなど、烏滸がましいにも程があることは重々承知の上で、ビハールはその場で進言した。
「……これまで問題がなかったのは、おそらく上天使様がこの作業にあたってなかったから、じゃないですかね?」
エドウィンがビハールの横に立ち、質問した。
何故これまでこの問題が起きなかったのか、その謎はエドウィンの言ったように考えれば納得がいく。
その上天使は難しい顔をして答えた。
「たしかに……私の本来の仕事は神界からのご指示を数値化する事で、先日だけ休暇の者に変わって通達関係の仕事にあたったのだが……」
「これまではその通達の作業をしていたお方が間に入ることで、問題なく済んでいたということですね」
エドウィンの言葉に、決定部署の他の上天使が周りの上天使達を見て言う。
「こりゃー、その数字の書き方を周知して固定せにゃならんな!」
すると数字を書いてくれた上天使も同意して言った。
「それと……迷惑をかけてしまった雲絵師達にもお詫びをせねばならん」
いつも喧嘩腰に対応してくるのは決定部署の方からで、多くの天使達が特に雲絵師の天使達はその言葉に驚きを隠せずざわめき出す。
「お詫びというならこちらもじゃろう。今朝、初めのミスがあった時点で皆がもっと密に連絡を取り合っておれば午前には半分以上の問題が解決していたじゃろう」
ざわめきはその声にかき消され、全員がその声の主の方を向く。
雲絵師の上天使、そのまた上の存在である神様が、やってきて言った。
そう、昨日ビハールがお小言をいただいたあの神様である。
「そこなビハールの言う通り、計画部署と雲絵師部署、仲良くとは言えずとも、もっと密に会話することは可能じゃろう? お主たちは紛れもなく神から選ばれた|天使《魂》達なのだから…………」