動いたビハールと天使の魂
「どうしたんだ?」
覗き込んできたエドウィンにその書類を見せる。
「エドウィン……これってさ……」
「ん……? あぁ~……。
コレはしょうがねぇな───っていうか認識してるやついなかったのか? そこが謎なんだが」
「…………ちょっと計画部署の方に話してきます」
ビハールは、そう言って書類を持ったまま、計画部署の扉へと向かった。
普段ならば、こんな行動はしないできっとこっそりと報告をしに行ったであろう。
けれど、コレが本当に今日のミスの原因ならば、そしてそのせいで彼が罰せられるのは…………理不尽だと思ったのだ。
「……?……」
昨日ビハールに水を掛けた天使は一人で立ち上がり、状況が飲み込めず駆けていくビハールを何も言わずに眺めていた。
コンコンコンコン!
四度のノックの後、割とすぐに扉は開かれ、決定部署の上官天使が扉を開けた。
「なんだね?」
先程きたばかりの上官天使が少し気の立っている様子で扉を開き、ビハールの顔を見て言った。
「この書類に書かれている数字について、お話があります。できたら沢山の天使がいる場所がいいと思うんですが……」
そう言ってチラリと、後ろにできはじめた天使だかりを見やる。
「しかし────」
「出来るだけ沢山の者が知っていた方がいいことなんです」
これだけ大変な問題となったのだから、知らない者が多いということ。このままにしておくのは全員にとって良くないと、ビハールは必死になって訴えた。
「今回のこと、誰にも大した咎はありません! 計画部署全体も、彼も、悪くはないと僕は思います!」
ビハールの必死な様子に上天使は室内の他の上天使達と目配せをして、ゆっくりと頷いた。
「よかろう、集まれる者をそこに全員集め、それから君の話を聞かせてくれ」
そしてすぐに、その場にいた計画部署に所属する上天使七名と、両部署のすぐここに来れる者達が通達所へと集められた。
「お忙しいところ集まっていただいて申し訳ありません。
今日起きたミスが、放っておいたらこれから度々発生することに気付いたので、出来るだけ沢山の方々に知っていただくため、集まっていただきました」
集まった天使達は、ビハールの言葉を静かに聞いていた。
「まず、僕たち天使は神界の神様に作られましたが、元となっている魂はその神様が選び抜いた物だというのは皆さんご存知ですよね?」
この知識は天使が生まれた瞬間に与えられる知識で、皆平等に持つ。
「僕たちは自分の魂が元は何だったかなんて知ることはないですが、元の魂に影響される部分が少なからずあります。
それもまた個人差がありますが」
「そんなものは天使の常識の範囲だろう……早く本題に入れよ! オレ達は今日決定部署のミスのために大変だったんだから…………!」
一天使の雲絵師がそうイラついたように言う。
おそらく彼も今日の采配ミスのために大変だった一人なのだろう、憤りを必死に抑えながら言っているのがわかる。
「……じゃあ見せます」
ビハールがそう言うと、エドウィンが臨時用の書き込み掲示板、ホワイトボードを持ってきて声を上げた。
「すみません、この通達を出した御方に少々お手伝いいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
エドウィンが七十パーセントの指示が書かれた紙を掲げて呼びかけると、偉いお方々が集まっている所から、一人がスルスルと出てきた。
「何をしたら良いのだ?」