ミスをした者
カフェで少し休憩してからいく者と、すぐに通達所にある報告スペースで今日の作業報告書をまとめて帰る者に分かれ、ビハールとエドウィンは通達所へと向かった。
朝から様々なミスが続いていたのは確かなようで、報告を受ける雲絵師の上官の方々も、何やら忙しそうにしている。
二人は通達所から決定部署へと続く階段の近くに、空いている場所を見つけて、そこで報告書を書き始めた。
計画部署の部屋は昼食の時と同じように、何人もが入れ替わり立ち替わりで上官天使までもが休日返上でやってきているらしかった。
「僕、初めてかも……」
「ん? 何が?」
「計画部署の上官天使様をお見かけするの……」
先程部屋に入っていった、茶色に近い金色でストレートの髪を、後ろで一つにまとめている美しい上官天使を思い出しながらビハールがつぶやくと、
「あぁ、あそこはよっぽどのことがない限り完全に昼番と夜番に別れてるからな。
さっきこられた方は基本夜番の方で、今日明日と休日なんだが処理しきれなくて呼び出されたらしい」
「……それだけ今日のゴタゴタが大変だったってことなのかな……って、エドウィン……計画部署の事なのによく知ってるね?」
「中天使になった時、いろんな部署の上官達とも話しててな。
上の方の雑用もこなす条件でここにいさせてもらってるからなー。休憩時間に呼び出されて知った」
「そ、そうなんだ……!」
知らないところでエドウィンは随分と重要な位置に立ってたんだと認識を新たにしたビハール。
「今日はとにかく雲絵師達のサポートをってんで、休憩時間も飛び回ってたからくたくたよぉ」
二人が書類を書きながらそんな話をしていると、階段上の計画部署の部屋から珍しく、怒号とまではいかずとも、大きな声が聞こえてきた。
「とにかくお前はしばらく謹慎だ! せめて今通達所に集まっている雲絵師達にだけでもいいから謝罪をするんだ!
あとは沙汰があるまで自室にて待機していろ!」
そう言われて出てきたのは、先日ビハールに水をかけた天使だった。
「……すみませんでした……!」
そう言って頭を下げ、出てきた彼の手には一枚の書類が握られている。
バタンと扉は閉められ、トボトボと階段を降りてくる姿が見えた。
「彼は……」
ビハールが呟くと、ちょうど近くで同じように報告書を書いている同僚の天使が言った。
「今日の朝からのミス、ほとんどあいつが書き込んだ指示表が原因らしいんだ。
こないだお前に水ひっかけたバチがあたったのかもしれないな」
「そんな…………」
階段を降りてきた彼がビハールに一瞥をくれるが、バツの悪そうな顔をして下を向きながらビハール達の横を通り過ぎた。
その時、雲絵師の天使が数人やってきて彼にわざとぶつかるのを目撃してしまう。
「……!……」
ぶつかられた反動で紙は手から離れて、彼はよろけて尻もちをつく。
なんてひどいことを、と彼に手を差し伸べに行こうとした時、ビハールの足元に彼の持っていた紙がひらりと落ちてきた。
落ちてくる時垣間見えたモノが気になって、それを手に取り見てみると、それはちょうどあの七十パーセントの空の指示表だということがわかった。
「これは…………!」
それを見たビハールは、多分……今日何があったのかを全て理解した。