ビハールの知らぬエドウィン
「始末書には、なぜ失敗したのかと、その失敗に対するお主の考える対策をしっかり書くように」
神様の執務室にて、ビハールは一通りのお叱りを受け、始末書の紙を受け取った。
「……はい……本当にすみませんでした……」
「十日で三回の失敗は確かに少なくはない……。
じゃが、雲絵師の手が足りなくて全員がコンスタントに休みを得るためにも、お主にも一人前になってもらいたいと思っておる」
そう思っているのはもしかしたら神様だけかもしれない。
雲絵師の集う休憩所や食堂では、エドウィン以外のほとんどのものが蔑んだような目で自分を見ているようにしか思えない……そうビハールが思うと、
そんな胸の内を見透かすように、神様は続けた。
「そもそもなり手が、やりたいという者も少ないこの仕事、長く続けられる者も時間内にあの広さの空に雲を入れれる者もそう多くはない」
そう、それが規定の時間に達しただけで試験もなく、すぐ使用期間に入れた理由なのだ、と三日間の研修の時にも言われたな、と思い出す。
ビハールとエドウィンが憧れたこの職業は、指示次第で大変さが増減するし、その日の担当の|部屋《そら》が決まっているので、必然的に曇りの次は大雨、そして嵐、というように大変な作業が続くことも多い。
「天使の主要な仕事は魂を導くことで、それを速やかに行うためにその魂の事を感じ取らなければならない、全体的な性質もそちらに特化していてそういった者の方が多い。
この何かを生み出すというタイプの雲絵師の仕事は、感じ取る能力が高いだけの天使には、不向きな仕事……
他の者がどう見ようと、何と言おうと気にするな。己には他の一般天使にはない才があるのだと、誇りに思うがよい」
そうは言われるものの、ビハールにはその一般天使が持つ能力の方が低いらしく『感じ取る』という感覚がそもそもわからない。
あちらからしたらただの『落ちこぼれ』なんだよな……とやはり気持ちは下を向いてしまう。
「善処してみます……」
「時に……エドウィンの作業をよく見てきたか?」
「はい……!」
「知っておるか? あのエドウィンにしても、初めの頃はよく失敗しておった。時間に間に合わないことも多々あった」
「……そうなんですか……?」
勤め出した頃からもよく会っていたのだが、そんな話は一度として聞いたことがない、とビハールは聞き返した。
「そうじゃ。じゃが今では他の者の失敗をカバーできる程までにまでなった。
お主と彼はよく似ておる。
許可は出しておくから、時間と体力の許す限り、見学に行くと良い。彼の作業は、その心は、お主の参考になるじゃろう」
「はい…………」
そう言って、ビハールは神様の部屋を後にした。