二人で完成させた空
エドウィンは、ビハールの担当時間の終わりまでに、ぶちまけられたペンキから見事な雲を描きその時間の空を完成させた。
「ふぃーっ……! これでどうだ?」
作業を終え、額から流れる汗を自らの腕で拭いながらエドウィンはビハールに向かって言った。
「すごい! すごいよエドウィン……!」
乾ききった筆を背負い、ビハールは目を輝かせながら拍手する。
眼下に広がるその空は、ビハールが理想としていた以上の出来で、いつまでも見下ろしていたいと感じるものだった。
「俺はな……本当はこういうのが得意なんだ……。
誰かの描いた空を……壊さないようにその続きを描くっていうの……?」
キラキラとした眼差しを向けるビハールに、少し言葉に困ったような顔をしたエドウィンは、眼下に出来上がった『空』全体を見渡しながら言った。
どういうことなのか? とキョトンとした顔をして見るビハールの目に、真っ直ぐと空を見下ろすエドウィンの横顔、その瞳の深い藍色が揺らいだように写る。
「コレはビハールが描いた、良い雲があったから完成した空だ。『俺たち二人で』完成させた空だ────」
尊敬する先輩であり、友でもあるエドウィンに褒められ、二人で完成させたのだという言葉に嬉しく、くすぐったくなり、ビハールも同じようにその空を見渡した。
すると、どんよりと曇っていた心がその見下ろしている空と同様に、風で流され美しい晴れ間がのぞき、口から意識なく言葉がもれ出た。
「綺麗だ…………」
「……あぁ!」
二人の目に写るその空は、下界では『一瞬』の命だ。
もうしばらくすると、この空間の描き上げた雲は全て消えて青い|キャンバス《空》だけが残される。そして次の担当天使が次の『一瞬』の空、を描き上げなければならない。
地上ではその間、次の『一瞬』に向かって雲が止まることなく動いていく。
そこで働く天使たちは、その動く空を目にすることはないが……自分達の仕事を誇りに思い、日々空をつないでいくのだ。
「さて。俺は次の空を描かなきゃならないから、新しいペンキ取りに行くよ。
ビハールは報告作業、してこいよ?」
「…………うん…………」
報告作業。神様のところに行って、作業終わりの報告と、始末書も書かなければならない、とビハールの心は再び曇った。