ビハール、その失敗の数々
初めの三日間は研修で。三人一組のグループで一つの|部屋《そら》を担当し、四日目から本格的な試用期間が始まり、一人一つの|部屋《そら》を担当することとなる。
まだ一人での作業には慣れないものの、憧れの職業であった『天候操作』の現場に就くことのできたビハールは、必死に作業をしてきていた。
今日のこの地域の天気は『晴れ時々曇り』で、どのような曇りにするのかは、最高で六十パーセントまでとの指示が出ていた。
ビハールは、一面に流れるような……見る|者《ひと》が一瞬でも良いから見惚れるような、そんな|雲の絵《そら》が描きたかったのだ…………
「はぁ…………もうクビかもしれないな…………」
ぶちまけられてしまった白いペンキを眺めながら、ビハールは独りごちた。
初めの失敗は、初日。
ゆっくり描きすぎて、時間ギリギリになり焦って転び、虹用のペンキを全部ぶちまけ下界には大きな変な形の彩雲となって現れた。
二回目の失敗は、三日目。
時間ギリギリにならぬようにとペースを上げて書いていたらペンキを使いすぎて足りなくなり、新しいペンキを取りにいったら、お前何んで二杯目なんか取りに来たんだ? と上司の天使に問われ。
よく確認したら自分の担当の部屋はわずか五パーセントの雲の予定で、ビハールは隣の部屋の指示である天気の絵を描いていたという……。
そして昨日まではなんとか、『下手くそ』『失敗作』と笑われながらも時間には間に合い、指示通りの分量の雲を描けていたので、今日は少し勇気を出してみたのだ。
例え下手くそと言われようとも、時間も分量も大丈夫になってきたのだから、少しは描きたいように描いても時間内にちゃんと出来るはず、と。
自分の思う通りの雲を描き始めたビハールは、楽しくなってきて踊るようにして描き込んでいった。
そして夢中になってしまい、周りが見えなくなっていたビハールは、身の丈程ある筆を踊りながらグルンと振り回し、それが運悪くバケツに当たって倒れ、残りのペンキが流れ出したのだった。
周りが見えなくなるほどに踊るなよ、と言われればそれまでなのだが……。
三度も上司とその上の、部署の管理者である先程やってきた神様、そして次の担当の先輩天使にまで迷惑をかけていては、もう…………