覚悟を決める
星が瞬き、様々な星座が広がる夜空。
月はかろうじて部屋の隅に位置していて、部屋全体を優しい光で包んでいた。
夜空に見とれている場合じゃない! と部屋から出て扉の確認をする。
木製の扉には荘厳な彫りでFの文字が刻まれている。
「部屋は間違ってない……」
階数は、と自分の立つ廊下の床を見ると、一定の間隔で十七と、数字が入っている。扉と扉の間の壁にも。
階数も間違っていない。
じゃぁ自分が掲示板を見間違えた? そう思って急ぎ戻ろうとすると、
「よ、ビハール。掲示板見たぞー! 今日、午前は隣の部屋だな!」
エドウィンがやってきて隣の部屋の前に降り立った。
「エドウィン……掲示板で僕の担当の部屋を……?」
「ん? あぁ。もう日課だな」
そう言って苦笑すると、何故か照れるような仕草で人差し指で頬をポリポリかきながら言う。
「泣き虫なお前が、助けてって言ってきたらすぐに行けれるように担当の場所だけはいつも把握してるぞ……?」
自分だけならまだしも、エドウィンもまでが見間違えるはずはない。すると──僕の担当の部屋はここで間違いない。
「ん? どうかしたのか?」
ドアの文字を眺めて止まってしまっているビハールを心配してか、声をかけてきた。
「部屋を間違えたかと思ってたんだけど、エドウィンも見たなら大丈夫だね」
これ以上心配はかけたくないし、夜の空は昨日の最後にも担当したからきっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせてビハールは言った。
「エドウィンはこの時間の後は休憩?」
「今日は朝一から連番で、しかも六十七十の割合だ。アイツらの采配には時々超不満だ」
俺は朝が苦手だって何度も言ってるのに、とぼやいた。
「ははは、それだけエドウィンが良く出来るって事だよ!」
肩をすくめて「まぁしょうがないけどな」と言った。
じゃぁそろそろ行くね、とビハールがF部屋のノブに手をかけると、
「そうだ。俺、連番の後は昼時に入ってる。お前はどうだった?」
「僕はこれの後休憩で、昼前に連番。エドウィンよりは楽かな、三十と四十だから」
「そっかー今日は昼一緒に食べれないな……残念」
「今日仕事終わったら僕の部屋に来てよ、昨日のお礼に晩御飯作るから」
実は昨日そのつもりで食材の買い物もしておいたビハールは、昨晩のうちにエドウィンの好きな料理の仕込みもバッチリしてきていた。
「お、それは嬉しいな! 寄らせてもらうよ」
「じゃ……僕行くね。どんな空にするか、前任者の空見ながら考えるよ」
「おぅ、頑張れよー!」
「じゃぁ仕事が終わったら!」
「楽しみにしてるよ」
心地よいエドウィンの声を胸に刻み、笑顔で再び部屋に入ったビハールは、美しい夜の空を前に気合を入れ直した。