特別な飲み物とエドウィンの告白(前半)
天界一大きなショッピングセンターで買い物を終え、夕食を済ませてから帰ることにした二人は、フードコートでそれぞれの好きなものを注文し、食事を進めながら話をした。
「そういえば、いつのまにエドウィンは中天使になってたの? 中天使なのに身分を現すブローチの玉の色が変わってないのは……雲絵師を続けてるのは何故?」
中天使の玉の色は赤、今日のエドウィンのような力のある天使の総称で、あまり数はいないし上天使予備軍として通常は重要な役職に就くことになる。
けれどエドウィンは変わらず雲絵師の部署にいて、通常の天使達と同じ仕事をこなしている事に、ビハールは疑問を持った。
「それはな…………俺自身が中天使だという事に納得してないからだよ」
「……?……」
何故? と首を傾げるビハールにエドウィンはニヤリと笑いながらダブッとした服の懐をまさぐる。
「まぁコレでも飲んで聞いてくれ」
そう言ってエドウィンが出した小瓶には『天使の取り分』とラベルが貼ってあるのが見え、
「それ……!」
ビハールは思わず大きな声が出そうになり、一呼吸おいて声をひそめて言った。
「めちゃくちゃ貴重で高価な……!」
「お互い、今日を乗り切れたご褒美に!」
天使は天界よりも、もっと上にある神界を司る神に造られる。
それでも元になった存在というものがあるはずだが、何だったのかなど|天使《ほんにん》にわかる術はなく。
中天使以下のただの天使達は、職の変更も珍しくなく。特に職につくまでに半数は地上から来た魂達と共に神界へと昇り、光の玉となって全ての命のサイクルへと還ることも少なくない。
同じ頃に生まれた天使でも、おそらく残っている者は多くあるまい、とビハールもわかっていたので「ありがとう」と言ってその特別な飲み物が注がれた小さなグラスを受け取った。
エドウィンは一気にそれを飲み干し、話し始める。
「俺は…………これまでみんなに迷惑かけた分、自分のできる手伝いをしてきただけなんだ。それも自分の得意な方法で、な……」
デザートのイチゴをフォークでつつきながら話す彼を、ビハールは静かに見つめながらチビチビと飲み始めた。
「俺だって、はじめの頃は毎日ギリギリの状態で仕上げてたんだ。時間もギリギリでさ。
だいぶ慣れてきたある日、同期の凄く綺麗な空を描く奴がオーバーワークで居眠りしちまったらしく、もう交代の時間も近いのに予定の半分も描けてないって連絡が入って……
丁度休憩中だった俺はヘルプに入ったんだ。
そして自分の一つの大きな問題に気づいた──」