納得のいく空
ビハールはエドウィンが昼食をとる横で始末書を書き上げ、仕事おわりに一緒に買い物へ行く約束をして、作業へと戻った。
雲絵師の仕事はどんな失敗をしようとも、その日の担当からは外されない。
その理由は人員が足りないからだが、かえってよかったともビハールは思っていた。
初めての失敗の後、震える手で描き上げた空。
とても理想のものにはほど遠かったけれど、それでもちゃんとできたんだという自信につながったから……。
天候通達所にて、次の担当時間の確認をしにきたビハールに、決定部署の天使達が揶揄を飛ばす。
「これ以上仕事を増やすなよー! ビハール!」
「今度は失敗してくれるなよー!」
何を言われても、もっともだと思っているビハールは黙って自分の担当を確認する。
気にはしないと決めても、言われた言葉は降り積もる。
けれど自分はそれさえも乗り越えていかねばならないのだと、必死に前を向うと筆を背負い、バケツを手にしたその時……
「お前たち! 雲絵師の天使達の力量を感じ見抜き、仕事を振り分けるのが我々決定部署の仕事!」
天候決定部署の上天使がやってきて言った。
「この度の失敗は、自分たちの負債でもあると心得よ!」
ザワザワと決定部署の天使達が立ち上がり姿勢を正す中、上天使はまっすぐビハールの元に向かってやってきた。
「ビハールよ、気張らず研鑽を積むが良い。お主の内包する能力は確かな物なのだから」
柔らかく光り輝くその笑顔に、降り積もった負の言葉は限りなく消し去られ、ビハールの心は明るくなる。
「……ありがとうございます……!」
その日残り二回の担当は、再びパーセンテージと指示を忠実にこなすことに集中し、難なくこなすことができた。
けれどビハールの心にあるのは『これじゃない』という想い……。
何故なら、空の美しさのおかげで生きる気力が湧いたという話を、エンジェルロードを昇ってきた魂達から聞いたこともあり、雲絵師の仕事は指示通りにすることはもちろんのこと、地上の人々が見上げて心癒されるようなものにすることも大切な仕事なのだと思っていたから。
筆とバケツを片付け、ビハールはエドウィンと一緒に、とりあえず今日はあれ以上の失敗がなかったことを話しながら天界で一番大きなショッピングセンターへと向かった。
「後の二回は無事にできたみたいだな?」
「……うん……」
「納得はいってない、か?」
「…………」
こんな、試用期間もまだ十日程度の自分が、納得のいく空を描こうだなんて烏滸がましいにも程があるということはわかっている。
エドウィンだって、失敗の話こそ聞いたことがなかったけれど、慣れるのに数ヶ月はかかったというのは聞いていたから。
「なんでだろうね……僕はきっと欲張りなのかな……もっと素敵な空を描きたいって思ってしまうんだ…………」