お迎え部署
「言っても良いか?」
「あぁ……問題ない。それを聞いてどう判断するかはビハールの自由だから」
そう言ってイチゴを口の中に放り込んだ。
「……お前の弟分なんだよな? 雲絵師になる前からの……」
エドウィンがムグムグと咀嚼しながら頷くと、その天使は
「じゃぁ、言ってもあまり気持ちは軽くならないかもだけど……」
と苦笑しながら話してくれた。
「お迎え部署が、エリート軍団と呼ばれているのは知ってるよな?」
「はい、多くの天使がその職に就きたくて日々鍛錬している者がいるとも聞いたことがあります」
もちろん志願して受かる者もいるが、多くはいろんな部署からの引き抜きで構成されているらしいということも、ビハールは知っている。
「ははは、君もやっぱりエドウィンと一緒か」
「空だけに夢中になってきた奴は考えることも言うことも似るのかな」
「まぁ実際は、このお迎え部署の連中が特別ってわけでもエリートっていうわけでもないんだがな」
「そう……なんですか……?」
気さくにそう話す天使たちからは、確かに威圧感や特別な気配は感じず、そこら辺にいる天使や、自分ともそんなに変わりはないようには見えるけれど、外側からは見えない何かが彼らにはあるのだろうと思っていたビハールは、戸惑うように言った。
「まぁそこは置いといて、だ。一般的にはエリート、花形、みんなが憧れるというこの部署だが、これまでに天候決定部署からきた者は|一天使《ひとり》もいないらしいんだ」
「……一天使も……?」
「たしかに聞いたこないし、いないんだよな。同期も上の方にも」
「そう。そして雲絵師からお迎え部署へとスカウトがいく率は、ほかの部署よりとても高い」
「だから、奴らはオレたちの事が羨ましくて目の敵にしてくる」
「大抵の雲絵師はそう思ってやり過ごすのさ」
「…………」
もしかしたら……その部署の仕事に誇りを持っていて、スカウトされても行くつもりのない者たちばかりかもしれないのに……と、ビハールは少し思った。
けれど口に出すことはしなかった。
何故なら、先程彼らが言った内容からすると、エドウィンもおそらく似たようなことを彼らに言ったのだと思ったから……。
そしてこれまで大きな問題となってこなかったのも、そうやり過ごすことで、怒りの、憤りの矛先を別の方に向けて彼らに返さないでくる努力をしてきてくれたからなのだろうと────
「ま、コレはオレたちが考えた、彼らからの嫌がらせのような事柄を、争いに発展させないようにするための考え方だから。
君は君の答えを見つけると良い」
「そう。コレはただの一例だ。エドウィンはエドウィンで違う考えがあるらしいし、な」
違う意見だけれど、お互いを認め合っているエドウィンとの関係を、どこか眩しく思いながらビハールは彼らを見た。
「……俺の考えはなぁ……。
まぁ今はまだ話せないけど、ビハールがもっと雲絵師として独り立ちできたら話すよ……」
それっていつ……いやまず自分は独り立ちできるのだろうか……?
と、思わなくもなかったけれど、ビハールは「じゃぁボク、もっと頑張るよ」と言ってグラスの残りを飲み干した。